市北支部「看護職ネットワークの会」開催の経緯

掲載日:

大阪府看護協会 市北支部 
大阪市立総合医療センター  髙丸賀子

背景と目的

大阪市は政令都市の中で一人暮らしの高齢者の割合が最も高く、地域包括ケアシステムの構築が急務であるという背景があります。市北支部では地域連携の一環として、平成26年度に「退院支援の現状と課題」をテーマに、医療機関・訪問看護ステーション・老健施設・地域包括支援センター等の看護職が参加したシンポジウムを開催しました。地域内での同種施設のとの関係や連携が希薄な状況を改善するために取り組んだシンポジウムでしたが、多くの看護職から反響がありました。地域包括支援システムを構築するにはまず、支部地域で職域の異なる看護師の役割や業務を相互理解し、地域での看看連携を強化していきたいという意見が多く、「看護職のネットワークの会」(以下N会)を2015年7月に発足しました。発足に当たり、地域連携の現状や課題について意見交換を行いました。退院患者のADL等の情報が生活の視点でないため在宅では活用できない、病院は在院日数の短縮により入院業務に時間をとられ、退院指導や在宅への継続看護が十分に行われていない現状などが浮き彫りになりました。また、病院は在宅看護について理解不足で、在宅にもどれる病状わからず退院を躊躇していることや入院早期から訪問看護師が介入すれば、退院支援が円滑に行えるという意見もありました。さらに連携を進めるためには病院、訪問看護師が相互理解するために体験実習をすべきという提案もありました。これらの意見からN会でのテーマを3点に絞り、会を進めていきました。

テーマ1は「看護情報書(以下サマリー)の改善」 テーマ2は「顔の見える関係作り」 テーマ3は「地域で育てよう。わが町のナース」
実践経過・結果

テーマ1 在宅はどのような看護情報が必要か、病院は入院する時にどのような情報が必要かを各施設で使用しているサマリーを持ち寄り検討するなかで、それぞれが必要とする情報が同じとわかり内容を改善しました。そして、モデル病院で在宅や転院する際に新サマリーを試行しました。
約150件/3ヶ月使用後、提出先に意見を求めると「以前に比べ内容がわかりやすくなった、患者情報やカンファレンスの状況が記載され、在宅で活用できている」という評価を得ました。既サマリーは使用している施設により電子化のものと紙ベースがあるため、各施設のフォーマットに関わらず必要項目や記入内容を詳細に示した 具体例を挙げ、このたび、支部のホームページに掲載し、皆様に利用していただけるようにしました。

テーマ2 モデル2病院で訪問看護師を交え事例検討を始めましたが、調整がうまくいかず3事例以後中断したため、モデル1病院の7病棟で定例日を決め、定期的(1~2回/週)に訪問看護師と合同カンファレンスを行いました。 イメージ 定例会は2016年3月から開始し、12ヶ所の訪問看護ステーションが参加しました。これまではこの病状では在宅には戻れないと思っていた患者も退院できることがわかり、病棟看護師・医師の訪問看護に対する認識が変化していきました。

テーマ3 大阪府訪問看護ステーション協会から新卒訪問看護師の研修を病院で受けてほしいという要望があり、新人研修について研修内容やスケジュールを調整し、2016年4月から市北支部の1病院で2名が実習を行っています。 イメージ

 また、N会で各施設の研修に外部受講者の参加を依頼した結果、5病院と 4ヶ所の訪問看護ステーションが協力施設となっていただけました。相互実習については病院・訪問看護ステーション双方で窓口を決め、今後、市北支部のホームページに掲示し研修計画を進めていきたいと考えています。